モレノ・フランシスコ | 時計師・デザイナー

デザイナーの歩み

情熱、設計、そして再発見。

Deco Ibarraは、私の創造の軌跡が生み出したデザインの対話です。

2014年、私はフィリピン・マニラで時計ブランド「Ibarra」を創業しました。フィリピンの歴史や誇りをかたちにするタイムピースを届けたいという想いから、Ibarraは始まりました。時計は、単なる道具ではなく、文化や精神を語ることができる。そんな信念で、フィリピンの職人たちと共に時計をつくり続けてきました。

しかし、年月を重ねる中で、私は「時計づくり」に対する理解をさらに深めたいという強い欲求を抱くようになりました。

2022年、私は日本・東京へと渡り、ビジネスの学びと並行して、独立時計師としての道を歩み始めました。日本の時計職人たち、漆芸家たち、そしてその静かな美意識との出会いは、私の中の何かを大きく変えました。

東京では、自らの手で時計をつくることを始めました。ムーブメントの装飾、漆を用いた文字盤づくり、部品の手仕上げ。こうして立ち上げたのがMoreno Watch Studioです。そこでは、時間をかけて一つひとつ、まさに「自分の作品」として時計を制作しています。

このような背景の中で生まれたのが、Deco Ibarraというデザインラインです。

これは、私の個人的な成長と精神の進化をかたちにしたものです。Gran Luzはその第一作であり、マニラのアール・デコ建築の優雅さと、東京で磨いた感性が融合した作品です。

Gran Luzは、私の手で制作されたものではありませんが、Ibarraの時計師たちによって丁寧に組み立てられ、私が時計に対して抱くインスピレーション、規律、そして設計哲学がすべて込められています。

それは、Ibarraという出発点と、Moreno Watch Studioという現在地をつなぐ、「橋」のような存在です。

Deco Ibarraは、二つの都市、二つの時間軸、二つの自分が交差する、静かで美しい対話です。

そして、その対話が、誰かの時間に寄り添い、共に時を刻んでいくことを願っています。

— モレノ・フランシスコ

時計師・デザイナー